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大名古屋ふしぎ事典

東京から名古屋へ移住して、早くも20年。

今ではすっかり当たり前に感じるあれこれも、

初めて出会ったときは

びっくり仰天したものです。

よそ者にはふしぎに感じてしまう、

そんな愛すべき名古屋を

思い出すままに書き記します。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2014年6月25日

【グーとパー】

名古屋暮らしが長くなって、初めての名古屋弁に出会う機会もめっきり減った今日この頃だけど。「机をつる」とか「放課」とか、学校用語には結構びっくりする名古屋弁が健在だ。子ども時代は人口の流入出が少ないために、こうした方言が根強く残りやすいのかな、などと考える。

さて最近、地域の防災訓練で集まった数人を、ジャンケンで2グループに分ける機会があった。私は何のためらいもなく「グーパージャン!」と発声したら、「どこの生まれ?」と浮きまくってしまった。大人になってからは、学校のようなグループ分けの場面がなかったからなぁ、と妙な感慨にふける。そして名古屋人にはおなじみの掛け声で早速やってみたのだが、やった直後にもうその文言を忘れてしまって。「グとパで」の後は「分かれ」?「ふたつ」?「割れろ」?といろいろ考えても思い出せず、そばにいた友人に再度「グとパで揃い」を教えてもらう始末。

帰宅してから福井出身の夫に聞くと、「どんなんだか忘れたけど、そんなんじゃなかった」という頼りない返事。で、一番確かなネイティブナゴヤンの息子に確かめると、「グとパで揃い」のあとの相子は「揃い、揃い…」と「い」を強調しながら拳を振り下ろし、最後に「そ~ろった」と言って分かれるそうだ。「グーパージャン」にはそんな落ちはないが、「そ~ろった」には、さぁこれで文句なく円満に2グループできたぞ感が漂うではないか。グループを「分ける」行為よりも、分かれた同士が結果的に「揃う」ことに重点を置いたこのジャンケン、なんとも協調性を大事にする名古屋人らしいと改めて感動した次第である。

 

 

 

2013年1月7日

【お値打ち】

名古屋に来たばかりの頃、流通のコピーを書いていて初めて「お値打ち」なる新語に出会った。意味は「お買い得」。でも「安かろう悪かろう」じゃなくて、安いのにクオリティが高く価格以上の価値があるってこと。さらに「値打ち」を辞書で引くと「物や事柄がもっている価値、品位、値段」だけど、名古屋で「これは値打ちだわ~」なんて言う時はすでに「価値がある」「コストパフォーマンスが高い」という意味合いがのっかっている。こんな「値打ち」の使い方を知らなかったので、見知らぬ土地で暮らすのもなかなか値打ちなんだわ。

このお値打ち感を体現する筆頭が、名古屋人の大好きな喫茶店「モーニング」や「コーヒー回数券」ではなかろうか。名古屋モーニングは今や全国的に有名だけど、喫茶店のレジ付近にずらりと並ぶコーヒー10杯分の値段で11枚綴りの回数券は、お値打ち感ここに極まれり、といった圧巻の風景だ。

もうひとつ名古屋らしさの本領を発揮するのが、公共交通系プリペイドカード。SuicaやTOICAが額面通りなのに対し、ユリカやトランパスは発売金額5,000円で5,600円分利用できたり、昼間の乗車やバスの乗り継ぎで割引があったりと、名古屋ならではのお値打ちが満載だった。これらのプレミアムはmanaca導入とともに消えてしまったが、どっこい乗車や買い物で貯まる「マイレージポイント」「名鉄たまルン」に引き継がれている。この特典、名古屋人には外せないツボでしょう。ただし有効期限が来るとさっさとポイント消滅しちゃうんで、くれぐれもご注意あそばせ。

http://manaca.meitetsu.co.jp/point/index.html

 

 

 

2012年10月4日

【開店祝い】

バブル景気の頃に「名古屋嫁入り物語」というテレビドラマがあって、そのハデ婚ぶりが全国レベルからするとかなり異様で、記憶に残っている人も多いと思う。当地には嫁入り家具を周辺に誇示するシースルートラックまであって、初めて目撃した時はその奇天烈さに驚くより呆れてしまった。この嫁入りトラックは常に前進あるのみ。後戻りは縁起が悪いから。狭い路地に入る時はどんな対向車もバックさせるために、ご祝儀袋を用意していると聞いたことがある。恐るべし名古屋。

縁起物やお祝い事にはとことんお金をかける土地柄だから、開店祝いもさぞかし華やかで賑々しいものだろう、と思い込んでいた。が、ある時、ロケ中の車窓から目にした開店祝いの花輪が、なんとも地味すぎてショックを受けた。エコだかグリーン派だか知らないが、花輪に花がなくて緑の葉っぱだけが台座に植わっている。これは意外!と思ったら、「あ、花はみんな持ち帰ったんだわ」と地元スタッフがこともなげに言う。持ち帰ったって?まだオープンほやほやの、開店セール真っ最中なのに?と、はてなマークいっぱいになったが、名古屋では開店と同時に花を持ち帰るのがお約束だそうな。それだけお客さんが来て店が繁盛するという証しで、花が残っていたりするのはむしろ縁起が悪いらしい。

「郷に入っては郷に従え」とも「住めば都」とも言うし、質実剛健かつお値打ち感第一の名古屋流合理主義はかなり理解したつもりなんですが……。この祝い花の速攻奪取だけは、今もって感覚的にどうしてもなじめないんですわ。

 

 

 

2012年5月23日

【名古屋走り】

先日(2012.2.9)のブログで「よかったですか?」が妙な時制だと書いたら、ネイティブナゴヤンの友人が「あれは過去形として使ってるんじゃないよ~」と教えてくれた。「よろしいですか?」と聞くとちょっと押し付けがましいから、一歩引いて親しみを込めて「よかったですか?」になってるらしい。言われてみたら確かにこの表現、控え目で奥ゆかしさが漂っている気がしてきた。

ことほどさように、名古屋人は争いごとを好まない。「まぁまぁ」「え~て」「いかんて」と言ってる間に、何となく丸くおさまってしまう。この大いなる田舎では、ディベートなんかで表立って反対意見を申し述べるなんざぁ300年早いわって感じ。

ところが、こうした穏やかさと裏腹に、車に乗ってハンドルを握ったとたん豹変するのが「名古屋走り」である。これはもう全国的に有名だ(と思う)。あれだけ道幅が広いのに、よそから来た車は「名古屋を走るのは怖い」とよく言う。とにかくドライブマナーが荒っぽいのだ。急発進や急停止は朝飯前、命知らずの赤信号突入、カーチェイスさながらの無理な幅寄せ。隙間があれば強引に突っ込み、道は譲らず、やたらとクラクションを鳴らす。あまつさえウィンカーを出すことはなく、最初から車にウィンカーついてないのかと思うほど機能不全状態だ。名古屋とオコマ(尾張小牧)ナンバーの皆さん、周囲と対立せず波風を立てないようにと細やかに気配りするあまり、ひょっとするとめちゃくちゃストレス溜めてませんか?でも車の運転で発散すると危ないよ~。

 

 

 

2012年3月23日

【中学生日記】

NHKの「中学生日記」を初めて見たのは、小学生の頃だったと思う。子どもにとっては1年でも2年でも上級生は眩しく見えるもの、ましてや中学生となると相当な憧れのまなざしでこの番組を見ていたはずだ。けれど子ども心に何か判然としないモヤモヤもあった。ブラウン管の向こうの生徒たちは、果たして役者か素人か。生徒役の台詞には「~でしょう?」と時折妙なアクセントが付くし、同じ局で当時流行っていた「少年ドラマシリーズ」の子役とは明らかに違う素人っぽさがプンプン匂っている。

加えて今まで見たこともない不思議なセーラー服。どうして身頃は冬服の紺で、襟は夏服の白なのか?オシャレなのかダサイのか判定不能の制服は、「日本中のどこにもない架空の中学校」としてのフィクション性を高める記号なのだと私なりに理解していた。

それから10数年。子どもの頃には想像さえしなかった名古屋への引越しで、ふと女子中学生を見かけて驚嘆する。あの制服だ! なんのことはない、地元の公立中学はみな例の夏冬合体セーラー服を着ていたんである。さらに新年度が近づくと、生徒役の「出演者募集」もやっている。放送局まで30分だか40分だか以内で通えることが応募資格だ。そうだったのか!そこいらを歩いている普通の中学生が、「中学生日記」に出演しちゃってるのか~!と、番組に対してにわかに親近感がわく(と言っても見るわけじゃないけど)。そんな「中学生日記」がとうとうこの春終了してしまった。視聴率低迷が打ち切りの理由だけど、なんだか淋しいのである。

 

 

 

2012年2月9日

【名古屋時間】

「名古屋走り」「名古屋価格」と並ぶ名古屋三大ルール(私が勝手に命名したんだけど)のひとつが「名古屋時間」である。集合や開始の時刻が「10時頃」「2時頃」などと指定されたら、5分や10分の遅延は当たり前。さすがにオフィシャルな業務面はここ20年間で飛躍的に改善されたが、「~頃」的ゆるさは移動手段が車という当地ならではの事情が大きいのだろう。

ルーズな「名古屋時間」には慣れたけれど、どうにも気になって仕方ないのが時制の不一致だ。たとえば今日が月曜日だとして、「次の打合せは木曜でよかったですか?」なんていう会話。木曜日は未来なのに、なぜ「よかった」って過去になるのか?レストランで「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」とか、美容院で「ほかにかゆい所はなかったでしょうか?」とか、なんでいちいち過去形なのか?「よろしいですか?」「ありませんか?」って現在形でいいのに。この不可解な時制表現、名古屋に住み着くまで出会ったことがなかった。すごく気になっている。

で、私なりの考察ですが。これは「~とか」「~みたいな」に類する婉曲表現なのかもしれない。周囲との軋轢を嫌う名古屋の人々が、塩梅よくおさめようという配慮なのでは、と。はたまた、過去にはこれで「よかった」んだったんだから未来永劫「よかった」でしょ?と前例踏襲のお役所感覚で、有無を言わさず肯定させる無言の圧力なのか。正解はわかりません。どなたか教えてください。って、とりとめない結末になっちゃいましたが、こんなんでよかったでしょうか?

 

 

 

2011年11月11日

【とっきんとっきん】

わが家の家族構成は、福井出身の夫、東京出身の私、そして名古屋生まれの息子である。その息子は0才児クラスから名古屋市立の保育園に通っていた。離乳食もオムツはずしも、一日の大半を過ごす保育園でたいそうお世話になったものだ。ここで覚える片言は、やはり名古屋弁である。今どき八丁味噌の香りが漂いそうなこってりディープな名古屋弁を話すのは、よほどの年配か河村市長くらいだが、軽めの方言はいたるところに散見する。「けった」(自転車のこと)、「しゃこう」(自動車教習所のこと)などは、若者でも日常的に使う名古屋弁の好例だろう。

さて、わが家でただひとりネイティブスピーカーの息子。「ここどうしたの?」と入浴中に夫に聞かれ、「あおじ!」と元気よく答えても、夫にはさっぱり通じない。ちなみに「青あざ」のことである。「ベッタベタに濡れとる」てのも名古屋弁だ。両親は「びしょびしょ」としか言わないから、これは保育園で覚えてきたわけである。

そんな息子が小学2年生になり、最近放ったのが「とっきんとっきん」。私も名古屋ぐらしが20年以上になったが、初めて聞いた。これが名古屋弁なのかどうか、わが家で確かめる術はない。いずれにしろ、聞いたこともない言葉を巧みに繰り出し外界と交わっている息子を見るにつけ、何だか彼が遠い土地にでも巣立ったような一種淋しい奇妙な感覚に陥る。で、「とっきんとっきん」の用法はこうなふう。「鉛筆、あんまりとっきんとっきんに削らんで!」、まぁ意味はわかるんだけれども……。

 

 

 

2011年7月19日

【コーヒーぜんざい】

「小倉トースト」と聞けば、名古屋人以外は「ふぅん」と冷ややかに笑うかもしれない。私も初めて食したとき、あんことマーガリンたっぷりのトーストに驚愕して、味のミスマッチ感といい、主食だかおやつだかはっきりしなさ加減といい、積極的には関わりたくないと思った覚えが。けれども一緒に仕事をしていた地元のカメラマンに、「あんぱんと同じでしょう?あんことパンなんだから」と言われて妙に納得した。なるほど日本人が考案したあんぱんは、和洋食材の合体、いわば味の文化交流だ。

東京と大阪の中間点で、双方の良いところをとる弁証法思考の商品開発は、元来名古屋の得意とするところなのだろう。というわけで、本題の「コーヒーぜんざい」です。どうやら隠れた名古屋名物らしい。このミラクルな悶絶メニューを知ったのは、「地球のはぐれ方」(文芸春秋社)という本。かの村上春樹をして「人生がどんどん失速して、間違った軌道に落ちていってしまいそうな気がする。名古屋おそるべし。コーヒーぜんざいを好きになってしまいそうな自分がすごく怖い。」とまで言わしめている。

「小倉アイス」も「コーヒーフロート」も当たり前だけど、両方を一緒にしちゃうコーヒーぜんざいは、和洋混交のちょっとしたエポックメーキングだ。村上春樹が食したのは「加藤珈琲店」だが、私のイチ押しは錦三の「カフェボンタイン」。冷たいアイスクリームとあんこの器に、温かいエスプレッソを一気に注いでいただく。いとも斬新な名古屋流喫茶、ぜひお試しください。

http://loco.yahoo.co.jp/place/52fa43d15cfe5b4863752c0735e6a7b16aee9140/

 

 

 

2011年6月10日

【手羽先】

ケンタッキーフライドチキンのことを、東京にいた頃「ケンタ」とか呼んでいた。関西出身の友人は「ケンフラ」だった。で、名古屋では何と呼ぶかというと「ケンタッキー」である。略さないのである。略称で呼ぶほど親しまれていないってことかも。それじゃ名古屋人は鶏肉が嫌いかというと、そんなことはない。私が名古屋に来たばかりの頃は、住宅街の中に鶏肉専門の小売店があったくらいだから。

名古屋で鶏肉といえば手羽先。天むす、みそ煮込みと並ぶ三大名物だ。最近は名古屋めしが全国区になって、東京の居酒屋でも手羽先が普通に出てくるらしいけど、20年前の新米名古屋人にとっては初体験の珍しい食べ物だった。「風来坊」と「世界の山ちゃん」あたりが代表格だろう。

どの店がどんなテイストか、という話はジモティの食通にまかせるとして、私が最初に知った時からおかしくてたまらないのが「世界の山ちゃん」ってネーミングだ。日曜の朝、矢田川の堤防で草野球でもしてそうな山ちゃんが、なんだってまた大風呂敷を広げて世界をしょいこんでいるのか。世界を席巻しようとする恐るべき野望と、食べるのも面倒なちっちゃい手羽先のなんとアンバランスなこと! とはいっても、海外店舗が続々オープンしてるカレーハウスCoCo壱番屋の例もある。そんなことを思いながら山ちゃんのホームページを見たら、いやはや、本当に海外進出を企んでいるらしい。世界にぶち上げる「世界の山ちゃん」、もはやシャレにならないなぁ。

http://www.yamachan.co.jp/company/historycompany.php

 

 

 

2011年5月12日

【地下街】

名古屋の地下街は巨大だ。奥座敷にあるトヨタの威光により、地上は車優先となって、人間は地下に生息地を移したという説があるくらいだから。そんな地下街について語る前に、どうしても触れておきたいインパクト満点のアンダーグラウンドがある。

地下鉄栄駅の東山線ホームと名城線ホームを結ぶ連絡怪談、じゃなかった階段。もうハンパない異空間だ。古めかしい屋敷の屋根裏部屋か天井の低い中二階にでも分け入るかのように、狭い、暗い、怖いの三拍子。東京の殺人ラッシュを知る身としては、よくぞあの窮屈に折れ曲がった階段で将棋倒しの事故が起こらないものだと感心するばかり。

と、今回は前置きが長くなったが、地下街である。それも全国的に有名な名駅や栄じゃなく、東山線伏見駅のホームに直結している「伏見地下街」である。こうしてブログを書いている間にも、全長200メートルほどの地下通路まるごと跡形もなく消えてしまうのではないかと、実は気が気じゃないのだ。とにかくマニアックな匂いがぷんぷん。レトロで味わい深い。レトロというとあえて古さを演出している感があるけど、ここはむしろ何も手を加えず昭和32年の開業当時がそのままに残っている。洋品店や喫茶店(決してブティックやカフェではない)を眺めながら歩けば、強烈なタイムスリップ感に陥ってしまう。ある意味パワースポットかも。「伏見」をもじって「243」をURLに入れたオフィシャルページも、最近閉鎖してしまった。お近くへお立ち寄りの際は、ぜひお早めに潜入を!

 

 

 

2011年4月21日

【たわけ】

「えぇい、たわけ者!」「たわけたことを申すでない!」という具合に、私にとっての「たわけ」は時代劇にしか出てこない古語だった。「たわけ」とはもともと「田分け」に由来し、先祖伝来の土地を手放すのは愚か者、という意味があるそうな。そんな「たわけ」に日常会話で出会ったのは、名古屋に来てからが初めてだ。

東京では「馬鹿」、大阪では「アホ」と言うところを、ここ名古屋では「たわけ」なんである。「たぁけ~」とか「たぁけらし~」なんていうちょっと間延びした活用形もあって、罵られているのにカチンとくるどころか脱力してしまう。どこかしら牧歌的とすら思えるのどかな印象なのですよ。これは当地で生まれ育っていないから、ニュアンスが感覚的に伝わらなくて、馬鹿にされた気がしないのかもしれない。

ところで、「馬鹿の大足、間抜けの小足」という罵り言葉があるけれど、東京では最後のところに「丁度いいのはアンポンタン」をくっつけていた。それがなんと名古屋では「丁度いいのはくそたわけ」なのだ!という事実を、生コマーシャルのスタジオ収録中に、地元のスタッフに教えてもらった。物音を立ててはいけないその現場で、「たわけ」の最上級ともいうべき「くそたわけ」がどうしたことかストンとツボにはまってしまい、私はおかしさに身をよじらせ涙を流しながら必死に笑いをこらえた。その姿ははたから見たら、まさしく「くそたわけ」そのものだったに違いない。

 

 

 

2011年4月5日

【セントラルパーク】

名古屋の代表的な繁華街、栄の真ん中をドーンと縦に貫く都市公園。テレビ塔や噴水があり緑も豊かで、「札幌の大通公園に似てるな~」というのが私の第一印象だった。休日にはイベントがあって屋台が並び、クリスマスシーズンはイルミネーションが綺麗で、名古屋のシンボルロードとして親しまれている。ところが、この公園の名称を初めて聞いた時、お~っ!とのけぞりそうになった。なにしろ「セントラルパーク」なのですよ。

正確には南北約2キロにわたる全体の名称が「久屋大通公園」で、北から順に「リバーパーク」「セントラルパーク」「エンゼルパーク」と3つのエリアがあるそうな。それにしても、東京なら「日比谷公園」とか、横浜なら「港の見える丘公園」とか、普通は地名や歴史や風景といったその街ならではのアイデンティティを感じさせる名前を付けると思うんだけど、このネーミングは一体なにごとだろう?ちなみに「リバーパーク」には、名古屋市との姉妹都市提携を記念して、ロサンゼルスの石、メキシコのアステカの暦、南京市の石柱なんかが飾られている。ここまで他都市の威を借り、じゃなかった、友好の情を示さなくても……と思うのですが。

さて、最初にその名前にのけぞってから数年。「セントラルパーク」に何の不自然さも感じなくなった頃、地元の友人が発する「センパ」なる略語を聞いて、心の中で小さく叫びそうになった。センパだって?! ニューヨークの本家本元セントラルパークにしたら、海の彼方の地方都市でよもやこんな風に呼ばれていようとは想像だにできますまい。

 

 

 

2011年3月31日

【おまけ】

名古屋の喫茶店に初めてひとりで入った時のこと。定番のブレンドコーヒーを頼むと、コーヒーが来る前にやおらピーナッツの入った白い小皿を置かれた。「え?頼んでませんけど……」と喉元まで出かかったけど、店員さんはさっさと行ってしまう。「何これ?サービス?」と半ば喜び、半ば戸惑いながらあたりをキョロキョロすれば、どのテーブルにもカップのそばに小皿が置かれているではないか!間もなくコーヒーが来ても、店員さんは「間違えました」なんて小皿を引き取ることはなく、「ご注文は以上ですね」と伝票を置いて立ち去った。「ほほぅ。お茶請けがつくとは、サービスがいいね~」と感心して、たいそう得した気分がしたものだ。

後日この話をして、名古屋人に大笑いされる。名古屋の喫茶店では、こうしたおまけが至極あたりまえなんですと!日本全国おまけのつくコーヒーなんてないと思うけど、名古屋ではドトールやスターバックスみたいにコーヒーだけを出す方が珍しいらしい。コストパフォーマンス(名古屋語ではお値打ち感)重視の、いかにも名古屋らしい発想ではござらぬか。

ところでこのおまけ、たいていはピーナッツや柿の種や豆菓子が多い。私にはビールのおつまみ的なイメージが強いんだけど、コーヒー請けには果たしてどうなんでしょう? やっぱり洋物のミニバウムとか麦チョコあたりが妥当なんじゃないかと……。いやいや、おまけなんだから注文つけてる場合じゃないですね、ハイ。

 

 

 

 

  

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